★断熱材の種類と特徴
断熱材はまず原料の違いで「鉱物系」「発泡プラスチック系」「自然系」の3種類に分けることができます。それぞれ主に下記のような断熱材があります。
この分類を見ると、発泡プラスチック系の種類が多く、少しややこしく感じます。
日本における断熱材のシェアは圧倒的にグラスウールが多いようです。
≪鉱物系≫
・グラスウール
・ロックウール
≪発泡プラスチック系≫
・ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
・押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
・硬質ウレタンフォーム
・フェノールフォーム
・高発泡ポリエチレンフォーム
・ポリエステル
≪自然系≫
・セルロースファイバー
・ウール
出典元:バウムホーム
グラスウール
鉱物系断熱材で日本で最も多く用いられている断熱材です。リサイクルガラスを高温で溶かして細い繊維状にし、接着材を吹き付けて成形した断熱材です。中には大量の空気が含まれており、その空気をガラス繊維で動きづらくすることによって断熱効果が発揮されます。原料が鉱物なので燃えにくく、300℃まで形状を維持できるだけの耐火性能があります。また吸音性も高く、ハウスメーカーや工務店の標準仕様で設定されていることが多い非常に安価な断熱材です。グラスウール自体に吸水性はありませんが、表面張力や毛細管現象により水分が繊維の隙間に入り込んでしまうと、中の空洞が無くなり断熱性能が大きく低下してしまうため、しっかりと防湿結露対策をする必要があります。またグラスウールが濡れてしまうとカビが発生したり、水分の重みや地震の揺れなどによって下にズレ落ちてしまうと隙間が生じた部分の断熱性能が著しく損なわれることもあります。グラスウールは間違った施工が行われると本来の性能を発揮できませんし、施工する人によって性能に差が生まれやすい断熱材です。
引用元:断熱材.JP
≪メリット≫
・安価でコストパフォーマンスが高い。
・不燃性が高い。
・吸音性が高い。
・柔軟性が高く、施工が極めて容易。
≪デメリット≫
・水分を含むと断熱性能が低下する。
・防湿結露対策が必要であり、職人の技術によって左右される。
ロックウール
グラスウールと同じく鉱物系断熱材です。原料は鉄を生産する際に出てくる鉄鋼スラグや、玄武岩などの岩石で、それらを1,500〜1,600°Cの高温で溶かしたのち、強い遠心力で吹き飛ばすことで繊維状に加工します。要は綿菓子の製法と同じです。日本でのシェアはまだ少ないですが、北欧ではグラスウールと同じくらいのシェアがあります。特徴はグラスウールとよく似ており、700℃まで形状を維持できるだけの耐火性能があり、燃えにくいです。撥水性(水を弾く性質)が高いこともメリットで、グラスウールよりも湿気に強いことからカビの発生や断熱性能の低下を防ぐことができますが、全く湿気を吸収しないというわけではないので防湿結露対策は必要です。また吸音性も高く、比較的安価ですが、グラスウールよりも僅かに高価です。ロックウールは柔らかい断熱材で施工は容易ですが、グラスウールよりも柔軟性は少し劣ります。そして断熱性能は高性能なグラスウールと同等程度になります。
引用元:JFEロックファイバー株式会社
引用元:断熱材.JP
≪メリット≫
・比較的安価である。
・不燃性はかなり高い。
・吸音性が高い。
・撥水性が高く、グラスウールよりも防湿性が優れる。
・柔軟性が高く、施工が容易。
≪デメリット≫
・水分を含むと断熱性能が低下することがある。
・グラスウールよりも少し高価。
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
発泡プラスチック系断熱材でいわゆる発泡スチロールと同じ素材で、フォームスチレン、パイナルフォームなどの名称で呼ばれることもあります。製造法はポリスチレン樹脂に炭化水素ガスを吸収させて高圧の蒸気で約30倍から80倍に発砲させたビーズを金型に入れてさらに熱を加えることで製造します。簡単に言うとポリスチレン樹脂を発泡させ、熱や圧力を使って形をつくるのがビーズ法ポリスチレンフォームです。熱伝導率が低いため断熱性能が高く、床や外壁の外側の断熱に使用されることが多いです。素材は柔らかく軽量で自由自在に成型が可能なので、施工は職人の技術に左右されません。また発砲スチロールなので水を吸わないという性質から結露にとても強い断熱材です。デメリットとしては熱に弱いという特徴があり、80℃以上の温度で縮んで断熱性能が低下してしまいますが、夏の最も暑い時でも壁内最高温度は50~55℃と言われていますので、普通に生活する上ではなんら影響はないとも言えます。発泡プラスチック系断熱材の中では安価であるものの、鉱物系断熱材と比べると価格は割高となります。種類としては、特号・1号・2号・3号・4号に分けられ、特号が最も断熱性能が高くなります。
引用元:断熱材.JP
≪メリット≫
・熱伝導率が低く、断熱性能が高い。
・水を吸収しにくく、結露に強い。
・発砲系断熱材では比較的安価。
・長期に渡って断熱性能が低下しにくい。
・自由自在に成型が可能なので施工性が高い。
・発泡プラスチック系断熱材の中では燃えにくい。
≪デメリット≫
・熱に弱く、火事が発生すると収縮してしまう。
・鉱物系断熱材と比べると高価。
押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
発泡プラスチック系断熱材で、発泡スチロールの一種です。製造法はポリスチレンと発泡剤などの材料を押出機内に溶かして混ぜ、それを押出して成形します。ビーズ法ポリスチレンフォームと原料はほとんど同じですが、製造法に違いがあります。特徴はビーズ法ポリスチレンフォームとよく似ていますが、ビーズ法ポリスチレンフォームよりも少し断熱性能が高くなります。そして熱に対してはビーズ法ポリスチレンフォームよりも少し弱く、熱によって収縮しやすくなります。また押出法ポリスチレンフォームの断熱性能は気泡中のフロンに依存していますが、時間とともに空気に置換されいくため断熱性能が低下するとされています。種類としては1種・2種・3種に分けられ、3種が最も断熱性能が高くなります。代表的な商品にはデュポンスタイロ株式会社のスタイロフォーム、株式会社カネカのカネライトフォーム、株式会社JSPのミラフォーム、積水化成品工業のエスレンフォームなどがあり、日本国内ではこの4社で市場を占めています。
引用元:押出発泡ポリスチレン工業会
引用元:DENHOME
≪メリット≫
・ビーズ法ポリスチレンフォームよりも断熱性能が高い。
・水を吸収しにくく、結露に強い。
・発砲系断熱材では比較的安価。
・自由自在に成型が可能なので施工性が高い。
≪デメリット≫
・ビーズ法ポリスチレンフォームよりも熱に弱い。
・鉱物系断熱材と比べると高価。
・ビーズ法ポリスチレンフォームよりも経年による断熱性能の低下が顕著。
硬質ウレタンフォーム(PUF)
発泡プラスチック系断熱材で、製造法は有機化合物であるイソシアネートとポリオールを反応させると硬化し、プラスチックができます。この硬化反応において発泡させながら硬化したものがウレタンフォームです。現場で吹付けるタイプとパネル状に成形したタイプの2種類があります。現場で吹付けるタイプは専門業者が施工することがほとんどで、断熱材を窓や筋交い周辺など細かい部分にも隙間なく充填する事ができるため高い気密性を確保することができます。高い気密性が湿気を遮断するため壁内結露やカビの発生を抑え建物の寿命を延ばすことが期待できます。デメリットとしては火に弱い特徴があり、100℃以上の温度で変形してしまいます。高価な断熱材です。パネル状に成形したタイプには、寒さに厳しい北海道で1985年に誕生したFPパネルが有名です。発泡プラスチック系断熱材の中でも断熱性能が高い部材になります。
引用元:ジャストの家
引用元:FPの家
≪メリット≫
・押出法ポリスチレンフォームと同等の断熱性能がある。
・気密性能が高いため壁内結露やカビが発生しにくい。
≪デメリット≫
・熱には弱く、100℃以上で変形する。
・鉱物系断熱材と比べると高価。
・押出法ポリスチレンフォームよりもさらに経年による断熱性能の低下が顕著。
フェノールフォーム(PF)
発泡プラスチック系断熱材で、フェノールという熱に強い樹脂を微細な気泡に発泡させ、硬化剤を加えて成形した断熱材です。他の断熱材と比べて気泡が非常に小さいため断熱性が高くなります。熱を帯びると硬化する特徴があるため、非常に燃えにくい素材です。200℃までの熱に耐えることができ、燃焼の進行を抑えることができる程度の防火性能があります。断熱材の中でも最高クラスの断熱性、耐久性があり、有毒ガスの不安もほぼありませんが、他の断熱材に比べてかなり高価となります。代表的な商品には旭化成建材株式会社のネオマフォームなどがあります。
引用元:旭化成建材
≪メリット≫
・断熱性能がかなり高い。
・200℃程度までの耐火性能がある。
・経年による断熱性能の低下がかなり少ない。
≪デメリット≫
・他の断熱材と比べてかなり高価。
セルロースファイバー
自然系断熱材で粉砕した新聞紙などの古紙にホウ酸や硫酸アンモニウムを加えて耐火・防湿・防カビ性能等を付加した断熱材です。約1000°Cの炎でも表面が焦げるだけで燃え広がりません。一般的に施工は壁に専用シートを貼り付けて、ホースで内部に吹き付けていく充填工法で施工するため隙間を作らず高い気密性を確保できます。高い断熱効果と吸音性、不燃性、調湿効果や防虫効果があり、素材自体が本来持つ放湿性が内部結露の発生を抑制します。自然素材ですので安心して使用できますが、やや高価です。
引用元:株式会社小野寺工務店
引用元:株式会社小野寺工務店
≪メリット≫
・耐火性能が高い。
・吸音性に優れる。
≪デメリット≫
・他の断熱材と比べてやや高価。
以上、断熱材にも様々な種類があり、それぞれのニーズに応じて断熱材を選択する必要があります。
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